熊野の夏は陽射しが強く冬はとても寒い。先日、秋分の日に毎年行われる町一番の祭り「筆まつり」を終え、私が仿古堂に入社して1年半が経ちました。入社して間もない頃、弊社2階にある工房で筆の勉強のため筆つくりをしていた事があります。筆つくり(軸つくりを除く)を大まかに12工程に分けるとすると7工程を経験しました。この期間に学んだ事が営業として今、思わぬ所で生きる事があります。元来ものづくりが好きで特に伝統的工芸品に興味がある私はこの筆つくりの時間が楽しみでしたが。実際は全く歯が立ちませんでした。とにかく自分の手が自分の手じゃあないみたいで思うように動かない。道具を普通に持つ事すらもおぼつかない。せっかく作った穂が簡単に崩れた時は泣きそうになりました。そして品質を安定させつつ時間内に規定の本数の筆がつくれないと仕事にならない、(つまりスピードがいる)という大前提に気が遠くなりました。職人さんは、慣れるしか無いのよ、どんな仕事でも大変なのよ、と言います。筆つくりの職人として1人前になるまでに10年かかるそうです。『ものづくりが好き』『手先が器用』だけでは務まらない〝何か〟があるような気がします。絶対に良い筆を作る職人になるんだ、という強い気持ちかも知れません。楽しくて自然にのめり込んでいった、という職人さんもいるかも知れません。以前にも当ブログに書きましたが、実は私は当初職人を希望して仿古堂の門を叩きました。職人の採用は決まりましたので営業職であれば採用面接します、と言われ「はい、分かりました。お願いします。」となぜ答えたか不思議ですが、かえって本当に良かったと思います。職人さんは凄い!今は筆つくりの最後の工程「銘彫刻」の修行をしています。ひたすら横棒(数字の一)を引く練習から初めて、少しは形になりつつあります。毛を扱うのは本当に難しい。けれどこれならなんとか出来そうな気がします。